伯備線の優等列車について

S・M(47期生・中学3年)

はじめに
 現在、「やくも」は、4両編成か6両編成で運行されている伯備線の特急は、「やくも」と言う名前である。現在15往復ある。車両は、全て国鉄時代に作られた「381系」を使用している。この車両は、世界初の振り子式の電車である。振り子式とは、カーブで車体を傾けて、カーブでもスピードを落とさずに通過できるようにする方式のことである。
 381系は、現在、JR西日本のみが所有しており、紀勢本線の特急「くろしお」にも使用されているが、こちらは現在「287系」に置き換えが進んでいる。「やくも」用の381系は、全車リニューアル工事を受けており、当分安泰であろう。リニューアル工事を受けた車両は、「ゆったりやくも」と呼ばれている。
編成
やくもには必ずグリーン車が連結されているが、グリーン車は二種類ある。一つ目はクロ381で、出雲市側の1号車に連結されている先頭車両である。「ゆったりやくも」化が行なわれた際にクハ381から格上げされた。これと同時に、サロ381がサハ381に格下げされている。  もう一つはクロ380で、これもクロ381と同じく、出雲市側の1号車に連結されている先頭車両である。この車両は、前面パノラマが楽しめるような構造になっている。クロ380は、最近まで存在した、「スーパーやくも」用に主に使用されていた。クロ380が連結される「やくも」の場合、時刻表に、「パノラマ型グリーン車で運転」などの記載があるので、確かめて乗るとよい。  グリーン車は、前で述べたリニューアル工事で、2+1の三列シートになり、快適性が向上した。 また、普通車も含めて全席禁煙になっている。以下は、「やくも」の編成表である。 やくも編成表
出雲市方面 1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車
非パノラマ編成 クロ381 モハ380 モハ381 サハ381 モハ380 クモハ381
パノラマ編成 クロ380 モハ380 モハ381 モハ380 モハ381 クハ381
(2・3号車は連結しない場合が多い。また、組み換えなどが非常に多いため、上記以外の編成になることもある。また、多客期には岡山寄りに3両増結する。)
概略
 
「やくも」は、1972年3月に、山陽新幹線岡山開業に伴い、京阪神から山陰地方中部(米子、松江、出雲市など)に行くには、岡山駅経由が最速ルートとなったことから、岡山‐出雲市・益田間で運行を開始した。伯備線が電化されるまで、「やくも」は、「キハ181系」という、最近まで、播但線を経由し山陽地区と山陰地区を結んでいる陰陽連絡特急「はまかぜ」で使用されていた形式で運転されていた。1975年には、当時気動車特別急行では初の「L特急」に指定された。編成は8‐11両で、食堂車も連結されていた。
 1982年7月に伯備線が電化されると、当時の最新型で、中央西線の特急「しなの」と、紀勢本線の特急「くろしお」で使用されていた、381系に白羽の矢が立てられ、9両編成で運行を開始した。1986年11月のダイヤ改正で、一部の「くろしお」に使用されていた「485系」を「381系」に置き換え、スピードアップを図るため、「やくも」の各編成から3両(クハ381?モハ381?モハ380)が抜き取られた。この工事で、「やくも」用の先頭車両が不足したため、モハ381を先頭車化改造し、クモハ381とした。振り子式を採用した381系は、軽量化のためアルミ車体を採用していた。アルミ車体は、改造が難しいが、難点を無事克服し、9両が改造された。
 6両化されたあと、やくも史上最短の普通車のみの3両編成や、4両編成も登場した。現在は、3両編成は無く、前述の通り4両編成と6両編成のみになっている。
 1994年12月には、「スーパーやくも」が新設された。「スーパーやくも」は、塗色が紫系の専用編成が用意された。また、この時に、国鉄色だった「やくも」の編成は、リニューアルされ、塗装が緑と黄色、灰色の「やくも色」に改められた。2006年3月に「スーパーやくも」は廃止され、現在は「やくも」のみである。
停車駅
 やくも号の停車駅を見てみよう。岡山駅の次は、山陽本線と分かれる倉敷駅である。全ての「やくも」が停車する。倉敷には有名な美観地区や大原美術館がある。倉敷の次は、総社駅である。一部の「やくも」が停車する。総社には、備中国分寺などの名所がある。また、吉備線の起点でもある。さらに、ひとつ手前の清音駅から、井原鉄道の一部の列車も乗り入れている。
 総社の次は、全ての「やくも」が停車する、備中高梁駅である。備中高梁には、備中松山城などの歴史的価値が高い遺跡が多くある。  次は、新見駅に停車するが、かつては備中高梁と新見の間の井倉駅に停車していた。井倉からは、井倉洞や羅生門などの名所に行くことができるからであるが、観光客の減少に伴い、現在では全て通過する。
 新見駅は、全ての「やくも」が停車する。新見駅は姫新線(姫路ー津山ー新見)の起点で、備中神代起点の芸備線(広島まで)の運行上の起点でもあり、伯備線内では最大の規模をもつ。駅の南側には留置線があり、伯備線の普通列車用の115系や芸備線・姫新線のキハ120などの多くの車両が停まっている。 新見を出ると、県境を越え、鳥取県に入る。鳥取県で最初の停車駅は、生山駅である。生山は、鳥取県日南町の中心駅で、近くには石霞渓などの名所がある。生山の次は、根雨駅に停車する。根雨駅は鳥取県日野町の中心駅で、おしどりで有名である。「やくも」は、一部を除いて、生山と根雨に交互に停車する。
 根雨の次は、伯備線の終点、伯耆大山駅である。一部の「やくも」が停車する。伯耆大山からは、山陰本線に入り、島根県の出雲市駅まで直通する。そのため、山陰本線は、伯耆大山‐米子‐松江‐出雲市‐西出雲(京都ー城崎温泉間も電化されているが)の間が電化・近代化されている。
 次は、山陰本線の特急「スーパーまつかぜ」・「スーパーおき」も含めた全ての特別急行が停車する、米子駅に着く。米子市は鳥取県第二の都市である。米子駅の構内は広く、キハ47やキハ121・126などの多くの気動車が停まっている留置線や、伯備線の貨物列車が発着する米子操車場も隣接する。米子の次は、米子から一駅の安来駅である。一部の「やくも」が停車する。米子‐安来間で、鳥取県と島根県の県境を越えるので、この二つの駅の駅間は比較的長い。
 次は、島根県の県都、松江駅に停車する。県都の駅だが、鳥取県の県都である鳥取駅同様、2面4線のあまり大きくない駅である。 一部が停車する玉造温泉駅と、木次線が分岐する宍道駅(同様に一部が停車する)を過ぎれば、「やくも」の終点で、全ての特別急行が停車する出雲市駅に到着する。出雲市駅の駅舎は、出雲大社をかたどっている。出雲市駅の近くには、一畑電鉄の始発駅である電鉄出雲市駅もある。一畑電鉄を使えば、出雲大社などの観光地に行くことができる。一畑電鉄は、京王電鉄や、南海電鉄の中古車を運用しており、映画「REILWAYS」で一躍有名になった。 電化区間は「やくも」用の381系が全て所属する後藤総合車両所出雲支所がある西出雲駅まで続いており、伯備線からも普通列車の一部が西出雲駅まで乗り入れる。
381系
「やくも」が走る伯備線は、「くろしお」の381系が一部撤退したので、全ての特別急行が381系で運転される最後の路線となった。「くろしお」には、振り子式ではない287系が投入されたので、「やくも」にも、いずれ新型が投入されるのであろう。それまでの381系の活躍を望むばかりだ。
285系
  また、伯備線には、今では数少なくなった寝台特急である「サンライズ出雲」も走っている。「サンライズ出雲」は、東京‐出雲市間を走る電車寝台特急で、一日1往復走っている。車両はJR東海が2編成、JR西日本が3編成を所有する285系(SUNRAIZE・EXPRESS)を使用している。285系は基本的に2M5Tの7両編成で、定員増加のため電動車を除いて二階建てになっている。285系はJR東海車が大垣電車区、JR西日本が前に述べた後藤総合車両所出雲支所に所属しているが、事実上すべてJR西日本が管理している。また、JR東海車は名古屋工場で検査が行なわれていることになっているが、実際は全ての285系が後藤総合車両所(境線の後藤駅に隣接・境線の米子‐後藤は、後藤総合車両所で伯備線用などの電車を検査するために電化されている)で検査を受けている。設備は、A寝台シングルデラックス、B寝台ソロ、シングル、サンライズツイン、シングルツイン、寝台料金不要のノビノビ座席、ミニラウンジ、自動販売機があり、多彩なニーズに対応する新世代の寝台特急である。ノビノビ座席を除いて全て個室であることが大きな特徴である。1999年に運転を開始した。東京‐岡山間は、同じ285系を使用する「サンライズ瀬戸」(東京‐高松)と連結して走る。岡山駅で下り列車は解結、上り列車は連結作業が行なわれるので、鉄道ファンが集まることが多い。倉敷‐米子間では倉敷、新見、米子のみに停車する。しかし、「やくも」の381系と違い振り子構造ではないため、「やくも」よりもスピードが遅い。後続の「やくも1号」との時間差は、岡山で約30分だったものが、米子では約10分になっている。岡山‐米子間の平均時速は、「サンライズ出雲」は約70KM/Hなのに対し、「やくも」は振り子構造のお陰で約80KM/Hである。以下は、サンライズの編成表である。
出雲市方面 1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車
  クハネ285 サハネ285
-200
モハネ285 サロハネ285 モハネ285
-200
サハネ285 クハネ285
(2・3号車は連結しない場合が多い。また、組み換えなどが非常に多いため、上記以外の編成になることもある。また、多客期には岡山寄りに3両増結する。)
285系
 それぞれの寝台を見てみよう。 A寝台シングルデラックスは、「サンライズ」で最もグレードが高い。現在は「あけぼの」のみに残る客車寝台特急のシングルデラックスは、「独房」と呼ばれるほど狭いが、「サンライズ」のシングルデラックスは違う。シングルデラックスは、2階建て車両の2階にあり、階下にある二つのベッドが並ぶ二人用B寝台「サンライズツイン」と同じ広さを一人で使える。
 通路から階段を上がり、個室に入ると、両脇にベッドと個室寝台としては大型の机があり、つきあたりの、机寄りに洗面台とごみ箱がある。洗面台には紙コップがある。ベッドの頭側には小物を置ける机がある。ベッド脇にある窓は東海道本線・山陽本線・山陰本線で南向きになる。また、窓は天井近くまであるので、星空が眺められる。また、個室の全てに共通するが、室内の明かりや冷暖房の調節、目覚まし時計、ラジオは全てベッドの頭側にあるコントロールパネルでできるようになっている。  アメニティは、全個室共通の浴衣・乗車記念のはがきのほかに、シャンプー・リンス・石鹸・くし・タオル・靴磨き紙などが入っている、とても充実したアメニティセットと、シャワーカード(B寝台・ノビノビ座席の乗客は車掌から購入し、3号車のシャワーを利用できる。ただし、数に限りがある。)、持ち帰り可能なスリッパ(白色・無地)が付いている。シャワーは4・11号車のA寝台専用を使用できるが、3・10号車の一般用も使用できる。
 シングルデラックスは、4・11号車の21?26番で、21?23番が禁煙、24?26番が喫煙である。禁煙個室から予約されていくことが多いが、喫煙個室でも換気扇の音はあまり気にならない。
 B寝台シングルは、1人用の個室で、「サンライズ」では最も多い個室である。1・2・5‐7・8・9・12‐14号車にある。「サンライズ」は、基本的に2階建てであるため、デッキから1階と2階に分かれる。廊下を挟んでシングルが並んでいるので、客車A寝台の「プルマン式」のようである。一部の個室は平屋部分にある。
 シングルデラックスと違い、ドアは引き戸式である。2階建て構造だが、室内では余裕で立つことができる。ベッド脇には、小さな机があり、紙コップが備えられている。大きな荷物は持ち込みにくいので注意。  2人用B寝台サンライズツインは、シングルデラックスの階下にある。1編成4室のみなので、競争率が高い。2人で利用する場合、たとえサンライズツインが満室だとしても、後述のシングルツインを利用できる。
 通路から階段を下り、ドアを開けると、真ん中に細い通路があり、両側に二つのベッドが並んでいる。入口付近は大人2人が立てるようにベッドの幅が絞られている。窓は南側にあるが、1階なので2階のシングルデラックスよりも展望が利かない。  1-2人用B寝台シングルツインは、その名の通り、1人でも2人でも使える個室である。1・2・6・7・8・9・13・14号車にある。大阪‐札幌間の豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」にも同様の寝台がある。個室の中は、2段ベッドと階段があり、2人で使えるようになっている。なお、補助ベッド(上段)使用する(二人で個室を利用する)場合、2人分の運賃と、1人分の寝台・特急料金、補助ベッド利用費5250円が必要だが、シングルを一人ずつで利用するよりトータルでは安くなる。また、2・9号車には、車椅子対応のシングルツインもある。この個室は、最大限の配慮がなされていて、デッキに近く、さらに車椅子対応トイレの目の前にある。このような個室は、JR化後に作られた寝台特急の車両(E26系「カシオペア」{上野‐札幌}と、この「サンライズ」の285系)にしかないが、他の寝台特急にもあるとよい。1人用B寝台ソロは3・10号車にある。この車両には、走るためのモーターが搭載されている。2階建て構造では基本的にモーターを搭載できないので、この車両は平屋になっている。
 「サンライズ」開発時に、平屋建てでも定員を多くするにはと考えたところ、「あけぼの」などで採用されていた「ソロ」 に白羽の矢が立てられた。室内は狭く、上段では下段のドア部分、下段では上段の階段部分が張り出す。さらに、寝台料金はシングルと1000円ほどしか違わないため、あまりおすすめできない。狭いので、大きな荷物は持ち込みにくいので注意。
  最後は、「寝台」ではない、ノビノビ座席である。これは5・12号車にある。「ノビノビ座席」は、指定席特急券と乗車券のみで乗車できる。名目上は「座席」だが、完全に横になることができるため、人気が高く、指定券が入手できないことも多い。 座席は下がA・Bで上がC・Dであり、4席に一つ階段がある。靴は通路の端に置く。各座席に窓、冷暖房の吹き出し口(開閉できる)、電灯、読書灯があり、頭の部分のみに隣席との仕切りがある。通路側にカーテンがある。座席間にもカーテンレールがあるが、カーテンは無い。盗難には注意する必要がある。寝具は薄い布団と、手ぬぐいのような布がある。枕が無いので注意。
おわりに
 かつては下りの「サンライズ出雲」の岡山‐新見間で朝食用の駅弁の販売が行なわれていたが、現在は廃止されているので、朝食を用意していない場合、岡山駅で7分間停車する間にホームの駅弁屋で購入するとよいだろう(岡山から先の停車駅では買うことができない)。  車内の共用スペースは、3・10号車にミニラウンジ、シャワー室がある。4・11号車のシャワー室は、A寝台の乗客専用である。ミニラウンジにある自動販売機は、種類が少なく、アルコール類は販売していないので、好みの飲み物は持ち込んでおくと良い。また、公衆電話は、現在存在しない。

この記事は2013年4月に執筆されましたため、現状と異なっている可能性があります。

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